効果的に運動して目的を達成するために必要なのは、「自分の現在地」を知ること
「現在地」とは、今の自分の状態のこと
こんにちは、GROUND RULE.矢野耕二です。
新生活もスタートし、「これを機に運動を始めたいなあ」と思っている方もいらっしゃいますよね。運動はぜひ身につけていただきたい生活習慣なので全力でお勧めしますが、1点気をつけていただきたいことがあります。
それは、「運動を始めるのは、自分の“現在地”を知ってからにしてほしい」ということです。
「現在地」とは、今のご自身の体の状態のこと。私は、運動を始める前には体力や筋肉、可動域やバランス感覚など、「今、自分の体がどのような状態にあるか」を知っておくことが重要だと考えています。なぜなら、現在地がわからなければ、どこをゴールに設定していいかも、ゴールまでどれくらいの距離があるかも見えてこないからです。
GROUND RULE.にトレーニングにいらっしゃる方も「なんとなく腰が痛くて」とか「最近疲れやすくて」とか「太っちゃったんで痩せたいんです」といった、漠然と主観的なことをおっしゃる方が結構多いです。もちろん、みなさんはそれでもいいのですが、私たちトレーナーはプロなので、それを数値に置き換えて可視化し、的確な指導をしなければなりません。
じゃあ、数値に置き換えましょうとなった時に、ダイエットなら体重や体脂肪率を見るというのが一つの基準になります。しかし、体の動きの良し悪しや体力の有無というのは、何か定義しなければわかりづらい。そこで、体力測定のようなメニューでそれらを数値化して、他の人とも同じ基準で比較することで、「あなたは今この位置にいます」というのをわかりやすくするのが「現在地を知る」ことになります。
「現在地」を知ることで運動を継続できる
もう一つ、現在地を知っておいた方がいい理由は、運動を続けるモチベーションになるからです。
以前、アンケートを取ったことがあるのですが、運動に対する課題は大きく、「運動の仕方がわからない」と「モチベーションが続かない」の2つでした。運動の仕方に関しては、GROUND RULE.のようなジムなどに行けば、トレーナーが指導できるのですが、問題はモチベーションのキープです。ジムに入会したとしてもモチベーションが続かなければ、通わなくなってしまいます。
そんな時に、現在地がわかっているというのは効果的。今がどのような状態で、ゴールが定まっていれば、その差やギャップを可視化することでゴールまでの距離がわかるし、そのために何をすればいいかもはっきりします。トレーニングをしていくうちに、始めた頃よりどれくらいゴールに近づいたかがわかるのもモチベーションになります。
誰だって「これ、いつまで続ければいいんだろう……」と思うと、続かなくなってしまうと思うんです。また、現在地がわからないままに「とりあえず走ってみよう」「筋トレをしよう」とすると、腰や膝を痛めてしまって「運動はしばらくやめておこうかな」となったり、「筋トレ、きつい……」となって止めてしまったりする。適切な運動方法と量で、運動を継続するためにも「現在地」を知ることは大切なのです。
「現在地」を知ることで運動を継続できる
そして、もう一つ。私たちトレーナーが、みなさんの体を「正しく動く体」に導くためにも現在地を知るのは大切なことです。
もちろん、「痩せたい」「体力をつけたい」といったみなさんの目的を達成するお手伝いをするのが私たちの役割ではあるのですが、ただそれを達成すればいいというものでもありません。今の体の動きを見ることが、身体機能の改善や将来の痛みや病気につながるような「未病」の部分もしっかり解消していくのが私たちの役割です。
例えば、「痩せたい」という方がいたとしたら、「目標体重まで落ちればOK」というわけではありません。きちんと機能する体かどうか、体の状態を見ながら「動ける体」を作っていくのが大事だと思っています。痩せるためにも動ける体を作るためにも、柔軟性や筋力も必要ですし、栄養や睡眠などの生活習慣も確認が必要です。お酒を飲む方なら、どうすればお酒も適度に楽しみつつ、体も改善していけるかなどをアドバイスする。必要に応じて食事指導もする。そういった指導をするためにも、その方の体の「今」を総合的に見る必要があるのです。
ですから、しっかり現在地を見て「何ができて、何ができないのか」を把握した上で、適切なプランを考えて指導する。そうして、その方のなりたい自分に近づけようサポートするのが私たちの役割だと思っています。
このように、現在地を知って、ゴールに向けて何をするかをプランニングしていくことを、専門用語で「SOAP(ソープ)」と言います。これは、医療の現場などでも使われている言葉です。
S……Subject(サブジェクト):主観的情報
O……Object(オブジェクト):客観的情報
A……Assessment(アセスメント):評価
P……Plan(プラン):計画
ご本人が気になっていることなどを伺って(S)、検査などで得た客観的な情報(O)をもとに、状態を評価して(A)、それに対してトレーニングや生活指導をするかの計画(P)を作って実行していく。この一連の流れを、私たちは「現在地を知る」と言い換えているというわけです。
「現在地」をするためのチェック項目とは
では、現在地を知るために、どんなことを確認するかをご紹介します。まずは問診です。
現在抱えている痛みがあればどの部分がどんな時にいつから傷むのか?
もし痛みがあれば過去にどのようなスポーツを行っていたか?今までに何か大きなケガや病気をした事がないか?
そして、健康の一番土台となる、睡眠、3食の食事、運動習慣などを振り返って頂きます。普段は中々自分を客観的に見れない人が多く、とても大切な質問になります。
そして、
●腸環境の確認
なぜ腸環境を確認するかというと、腸が疲れていると副腎が疲労し、慢性的な疲労を感じるようになります。また、血糖値の調整が難しくなることから、食後すぐに眠たくなってしまって運転に差し障ったり、なんとなくぼーっとした状態になってしまったりすることも。下記のチェック表で、3つ以上当てはまる方は黄色信号。5つ以上当てはまるようでしたら赤信号です。食生活の改善に向けたアドバイスなどを行います。
次に体の状態や動きを見ていきます。
●姿勢と呼吸のチェック
身体機能を正しく使うためには、姿勢を正すのも大切です。猫背やストレートネックなどになっていないかといった姿勢チェックを行います。また、呼吸の状態も、体の機能が使えているかに関わってくるので口呼吸になっていないか、呼吸が浅くなっていないかなどを確認していきます。
●動きの確認
普段痛みを感じていない人でも、正しい動きが出来ていない人は非常に多くいます。これは普段の行動様式に大きく左右される部分と関連しますが、将来の痛みにつながったり、上手く思い通りのパフォーマンスを出せない要因にも関連してきます。
また、自分では身体が柔らかいと思っていても意外に上手く関節を動かせていなかったり、その逆もあります。
●体力年齢測定
次に体力のチェック。下記のようなことを行ってどの程度動けるかを見ていきます。
・筋力……握力で上半身の筋力、片足立ち上がり(椅子から片足で立ち上がるテスト)で下半身の筋力をチェック
・俊敏性……反復横跳びで確認
・神経(バランス)……閉眼立ち(目をつむって片足立ちで何秒立っていられるか)で確認
・持久力……3分間の昇降台の上り下りで心拍数をチェック
これらの項目は、文部科学省の「新体力テスト」に合わせています。そうすることで、日本の平均値と比較して、自分が今どのレベルにいるかがわかるからです。「一般的な40代と比べて自分がどうか」といった見方をすることができます。
ダイエットを目的としている方の場合は、身長、体重、体脂肪を測って、目標の体重とBMI値を達成するためには、どの程度痩せないといけないかを出します。その際、目標体重まで痩せるには何をどの程度しないといけないかを算出。例えば、「現在が90kgで、BMIが21まで3カ月で落とすなら、毎日ジョギングを2時間半しないといけません」といった具合です。でも、「毎日2時間半のジョギングは現実的じゃないよね」と分かれば、期間を延ばしたり、食事制限を加えたりする。このように現在地と目標のギャップを視覚化することで、情報を共有しながら納得して目標を設定できるのがいいところです。
こういった現在地を調べるテストは、体験の時や入会時に行い、その後は3カ月に1度のペースでトレーニングを兼ねて実施しています。結果はプリントして、解説をしながらお客様と一緒に確認。こうして可視化されていることで、トレーナーとお客様が共通の認識が持てますし、目で見て変化がわかるのでモチベーションをキープすることにもつながっているのを感じています。
自分の体の状態を知って、一生使える体作りを
このように、自分の「現在地」をしっかり確認した上で目標に向かってアプローチをしていくわけですが、大事なのは定期的に現在地を確認して、PDCAを回していくことです。何が効果があって、どうして効果が出ないのか。そういったことを確認して一歩一歩、目標に近づいていくことで、目標を達成することができるのです。
そして、目標を達成したらそれで終わりというわけでもありません。私たちの体は、死ぬまでずっと乗っている乗り物のようなものです。病気にならないことももちろん大事ですが、何歳になっても自分の思った通りに動く体でいられるように、身体機能をキープしていく努力は大切なことだと考えています。
これらのチェックは、GROUND RULE.の体験(有料)でも測定しています。もし、自分の現在地を知りたいと思った方は、ご相談ください。
なお、アスリートやスポーツ選手の場合は、より専門的な、その方の競技特性に合わせた現在地評価を行っています。また、身体能力を底上げするようなトレーニングを実施しますので、どの競技の方でも気軽にお問い合わせください。
編集者:矢野耕二